この辺も三ヶ月くらい前に買ったアルバム


 Larry Heard / Sceneries Not Songs Volume 2
http://www.cisco-records.co.jp/html/item/003/075/item330159.html
今年に入ってから始まったエレクトロニックミュージックの名盤を続々復刻していく企画「Electric Soul Classics」シリーズ。7月に第三弾としてリリースされたのがこのLarry Heard「Sceneries Not Songs Vol.2」とAs One「Celestial Soul」そしてThe Detroit Escalator Co.「Soundtrack [313]」の三枚。これ書いてる時点でこのシリーズのラストとなる第四弾がもう出てるんですけども。


さてこのLarry Heardの「Sceneries Not Songs Vol.2」は以前に「Ice Castles」というタイトルでリリースされていたのを今回の再発にあたり前作「Sceneries Not Songs Vol.1」の続編という位置付けで新たに改題してのリリース。このアルバムは例えばMr.Fingers名義での"Can You Feel It"のような初期シカゴハウスのテイストをベースにしながら、当時彼が傾倒していたというスムースジャズ的なアプローチで作り上げた耽美的ディープハウスの傑作として人気の高い作品。前作の「Vol.1」に比べてアンビエント成分が若干控え目になっていてリズムがわりと全面に出ていたりするので、ある種リスニングテクノとしても楽しめる一枚。まあありきたりな言い方になりますがとにかく深淵で上品。それに尽きる。今年の夏はこれ聴いてフワーっと涼んでました。


 As One / Celestial Soul
http://www.cisco-records.co.jp/html/item/003/075/item330139.html
今月にこの「Electric Soul Classics」シリーズの第四弾として再発され、オリジナルは94年にリリースされた「Reflections」と、97年にリリースされた「IN WITH THEIR ARPS, AND MOOGS, AND JAZZ AND THINGS」のちょうど間に出されたアルバムがこの「Celestial Soul」で、サウンドの傾向もデトロイトテクノフォロワーとしての色合いが濃かった「Reflections」から、急速にジャズ色が強まる「IN WITH THEIR ARPS, AND MOOGS, AND JAZZ AND THINGS」のほぼ中間に位置するようなアルバムで、しかし決してどっちつかずではなくそれぞれの良いところをバランス良く取り入れることに成功している。またアルバムの後半はニューエイジっぽいトラックやラテンフレーバーがミックスされたハウストラックも聴くことが出来るなど、Kirk Degiorgioのルーツやサウンドの変遷、そして次回作への方向性や模索をうかがい知ることが出来るわりと重要で且つ楽しい一枚だと思います。


 The Detroit Escalator Co. / Soundtrack [313]
http://www.cisco-records.co.jp/html/item/003/075/item330120.html
これは今回のこの第三弾で聴いたことのなかったアルバムだったんだけどシリーズものはとりあえず揃えておきたいので買いました。彼が育ったデトロイト都市をアンビエント・ダブで描いてみせた、ある種感傷的であり私小説的な目線で作られたデトロイトサウンドトラック。なんというか彼が見た・育ったこの都市の情景はこれほどまでに色彩に乏しいモノトーンで彩られている街なのかと、奥行きある深いダブサウンドに浸りながらメランコリックというには少し寒々しい印象を淡々としたサウンドから受けた。とても良いですこれ。彼曰く、もうリイシューする考えは無いらしいので手に入れるなら今のウチに。


 V.A. / HUDSON Premium Audio Collection
http://www.jbook.co.jp/p/p.aspx/3356071/s
これタイトルだけ見ると一体どういう趣旨のアルバムなのかイマイチ分かりにくいんだけど、ハドソンの往年の名曲をファミコンPCエンジンから集めてアレンジしたアルバムっていう、まあそんなのはよくある話なんだけどこのアルバムは「当時の曲を当時の音源でもって再構築する」という趣旨になっていて、簡単に言うとファミコンの曲をファミコンっぽい音でアレンジするっていう一見まわりくどい感じの企画アルバム(;´Д`)しかしこういう手法は何も珍しいことではなく、同人界隈ではごく当たり前のように行われていることで特に目新しいことではないんですが、こういう趣旨のアルバムが一般流通に乗るっていうのは多分あまり前例が無いことで、そういった点ではとても画期的な事なのかもしれない。まあChiptuneといったジャンルや手法が広く浸透してきたからこそこういう企画もようやくメジャーとして乗る可能性が出てきたのかな?という気がします。


今回のこの収録曲で一番気に入ったのはid:WizardOfPSGさんがアレンジされた迷宮組曲ですね。というかWiz.さんが参加されるってのを知って買ったようなモンなんですが。詳しい曲解説はWiz.さんのところにあるのでそちらを。ありきたりなメドレーではなく「井戸のテーマ」をベースに迷宮組曲の色んなモチーフが無理なく乗せられていて、あんなにメルヘン一色だった迷宮組曲がむちゃくちゃコワモテなアレンジになっていてとてもカッコいい!その他で印象的だったのは松前公高氏のアレンジで、片チャンネルで原曲をそのまま流しながらもう片チャンネルからはSEをリズム代わりに刻みつつといった構成で、エフェクトはディレイとリバーブ程度に抑えられたシンプルなんだか手を抜いてんだが、しかし極力味付けはしないというプリミティブさが潔くてこれはこれでアリだと思った。EXTRAのコンピアルバムでも同様のコンセプトでやってましたよね。つーことであと数回はこの企画が続いて欲しいんでみんな買うといいです。


 RADIQ / Ballads for The Atomic Age
http://www.cisco-records.co.jp/html/item/003/039/item294199.html
半野喜弘によるダンスミュージックな側面をクローズアップしたプロジェクトRADIQの初となるCDアルバム。期待通りにクリック系なトラックが並んではいるんですが、黒人ラッパーのボーカルフレーズが随所に散りばめられていたりしていつになくアフロでファンクな様相が垣間見られ、またDamiana Terryという日本人女性シンガーによるとてもセクシーな声色とブレスが艶のあるクリックサウンドに一役買っている。この辺はまあダンスミュージックというよりバラードとして聴く方がしっくりくるのかなあ。あとRADIQも良いんだけど、RADIQ以上にフロアを意識した田中フミヤとのユニット「DARTRIIX」のアルバムが楽しみ。


 Joseph Nothing / Shambhala Number One
http://www.cisco-records.co.jp/html/item/003/045/item300521.html
アルバムテーマとしてチベット密教やシャンバラ云々が挙げられていて、そういったところから察するにかなりサイケデリックなアルバムになっているのかと思いきや、サウンド自体はそこまで取っつきにくいモノになっているわけではなく、むしろキレイに纏まりすぎている感すらあってROMZの作品にしては少々物足りなさを感じた。とてもキレイな上モノに惹かれるものがあるのは間違いないんだけど、もう少し曲ごとに起伏が欲しいかなあ。どうもコンセプトだけが先行しちゃっている印象で一枚通して聴くにはちょっとツラいなと感じた。キライじゃないんだがなあ(;´Д`)


 Ulrich Schnauss / Quicksand Memory
http://www.cisco-records.co.jp/html/item/004/032/item415241.html
アルバム「goodbye」の先行シングル。アルバム買ってから出てるのを知って買ってみた。収録曲は4曲でアルバムからは"medusa"が収録。そしてアルバム未収録の"look at the sky"という曲。残り2曲は過去の曲をRobin Guthrieがアレンジしたもの。とても便利な言葉に「マイブラ以降」や「マイブラ直系」というのがありますが、まさにそれすぎるアレンジで特にそれ以上の感想はないなあっていうシングル。