音で聴く「電子音楽 in JAPAN」に行ってきた

http://tcc.nifty.com/cs/catalog/tcc_schedule/catalog_071005181458_1.htm
細野晴臣御大曰く「これでYMOが分かった」と言わしめた、日本の電子音楽に関する膨大な資料と当時の関係者の証言を交えた、ひとつの「読み物」としてとても分かりやすくシンセの歴史を一冊に纏めた名著「電子音楽 in JAPAN」の著者である田中雄二氏のトークイベントが開催されるってことでこれはもう参加は義務ですよね。買ったチケットが50番台だったので、まあこんな酔狂なイベントに来る人ってこれくらいなもんかと思っていたらどうやら当日までには完売してたそう。お台場くんだりまで来たのに入れなくて不憫そうにしてる人がチラホラ入り口でいた。まあ中は中で居心地悪くて不憫でしたけどね!内装がオサレすぎだ!全然知らない人と対面形式で座るのはしんどい人にはキツいかもねー。次に行くことあったらカウンター席に座ろう(;´Д`)


そんでイベント内容としては「電子音楽 in JAPAN」の歴史を紐解く、というより「電子音楽 in JAPAN」で取り上げられた音源や、そこで紹介出来なかった音源をディスクガイドとして纏めた「電子音楽 In The(Lost)World」の内容を、順を追ってMacBookからiTunesを使って曲を流しつつ、田中さんがそれぞれについて解説をしていくという流れ。そしてゲストコメンテーターとして音ハメの津田大介さんとばるぼらさんが参加。実際にどういった音源が紹介されたのかは、自身で「電子音楽 In The(Lost)World」の概要を解説しているエントリがあるのでそちらを参考に。ここで紹介している音源が主な内容でした。


これらの膨大な資料がもう流れるような進行で、そして矢継ぎ早に紹介される音源や情報に圧倒されながら、まさに大学の講義を受けてるような感じでついて行くのに必死だった(;´Д`)まあ1955年に創設されたNHK電子音楽スタジオで始まった日本の電子音楽黎明期から初音ミクまでをたった4時間あまりで、しかも音源を聴きながらの進行となると掻い摘んだ数十秒程度の音源紹介や駆け足な解説になるのは、まあ仕方ないんですけどね。ただ田中さんのトークがとても流暢かつ丁寧で平易な話し方だったので、駆け足な進行ながらも分かりやすく聞くことが出来ました。開始早々のピーとかガーとかゆってる音源やミュージックコンクレートあたりの、海外や日本の電子音楽黎明期の解説で既に寝落ちして死んでる人とかいましたけどね!素数の比系列による正弦波の音楽とか言われても!みたいな(;´Д`)


イベント中盤で牧村憲一氏がゲストで登場。そしてミュージシャンとしては和田アキ子についでいち早くサンレコにおいて初音ミクに言及していた戸田誠司氏もトークに参加。その中でほんの触り程度だが初音ミクについてこういうような趣旨の事を仰っていた。

10年、20年前ならこういうソフトが発売されたら、半年くらい後にミュージシャンは初音ミクを使ってアルバムを出していた。しかし今は世に出た瞬間に、プロではないDTMを楽しんでいる一般の人たちが、初音ミクが話題になった一週間のあいだで、ニコニコなりYouTubeなりに作品をアップする。プロじゃない人たちがよってたかって初音ミクをいじっちゃうそのスピードに、プロのミュージシャンはついていけない。ミュージシャンがやるとなると、パッケージや流通を含め完成させるには半年はかかる。そうするとそれはもう「遅い」ことになる。そういう点でプロが参加出来ないのが悔しい。

動画共有サイトという場が出来たおかげで作品を発表するまでのスピードや、またその速度にともなう熱量は確かに強烈だなあと思う。チーターマンなんてあれ話題になった次の日あたりにはもうリミックスが出てきてたしね。戸田さんがそういったプロセスに関して悔しさを覚えるのも分かる。しかしスピードや旬を掴むというのもプロとして大切な事だけども、スピードだけで勝負するのがプロじゃないですしね。津田さんが言ってたけど、ミュージシャンのあいだでも「サンプラーが登場してきた時くらいのインパクトが初音ミクにはある」と言ってる人もいるそうなので、そういったプロの人たちがこの盛り上がりを黙ってこのまま見過ごしているわけではなさそう。荒削りではあるけどある種スピードが要求されるこのシーンに、遅れてきたプロが参戦してくるその時こそ、またVOCALOIDが一段と面白くなっていくんじゃないだろうか。とかブログっぽい適当なまとめ方で良いですか?


あとはまあ色々あるんだけど、内容が膨大すぎて全部把握出来たわけじゃないし(;´Д`)もう記憶も定かじゃないので、とりあえず覚えてる範囲を箇条書きするよ。

  • お台場が遠い。
  • 座ったテーブルの斜め前に山口優常盤響がいた。常盤さん、焼きそばとかソーセージをガツガツ喰って速攻寝てた。
  • 駆け足で紹介される音源のなかに、テイトウワとかまりんのアルバムで鳴ってる音が色々あって、そんな元ネタな音源につい反応してしまう。なんだったのかもう覚えてないんだけど。
  • あと大野雄二の「生命潮流」というテレビ番組のサントラ「LIFE TIDE」ってアルバムから"Windy Bay"という曲が紹介されたんだけど、これがテクノでありながらニューミュージックしてるむちゃくちゃポップな曲でこの日一番の収穫だった。これLPのままCDになってないらしいので、一刻も早い紙ジャケリマスターによるCD化が急務すぎる。
  • ジングルやCM仕事の紹介で鈴木さえ子の音源が色々あってかなり気にあるのがいくつかあったんだが、どうやらファンクラブとかに入ってないと入手出来ないのがあるらしい。そういうのがあるのかー。知らんかった。
  • 教授の「YOUのテーマ」やNHKニュース番組のオープニング曲とか紹介されるあたりで、みんなようやくホッとしだす。
  • 電子音楽 in JAPAN」の付録CDにも入ってたけど、シンセサイザーのデモ曲とかって良いですよね。この日はこの辺のアルバムとしてはなかなかお目にかかれない音源紹介が楽しみだった。
  • ドラクエ以前にオーディオのテスト用音源としてシナリオを書いたという堀井雄二のヨゴレ仕事とか聴けてわらった。
  • 今回紹介されてなかったけど安西史孝の「ローランド オーディオ・フェア'78」でのデモンストレーション用の曲とかこの辺の音源がスゲえ好き。
  • TPO時代の音源とかは結構紹介されてた。つくば万博の「HOSHIMARUアッ!」とか。この時代のと初音ミクを比較すると隔世の感はあるよねー。
  • Art of Noiseが使用したサンプル音源集とかそんなのあるのな。初めて聴いた。サンプリング関係ではホルガー・ヒラーのJR駅構内のチャイムとかを集めたコラージュアルバムなどが紹介された。
  • さっきの常磐さんの焼きそばがウマそうだったので注文する。
  • なにげにYMOのライヴ音源で"Das Neue Japanische Elektronische Volkslied"が紹介されてたけど、これいつのツアーのだっけ?アルバムにはなってないよなあ確か。
  • 最後に初音ミクのまとめとしてばるぼらさんが、初音ミクに似た名前の初音みうっていうタレントがいて、その人がブログで「初音ミク初音みうは関係はありません」って日記書いたらコメント欄に「自意識過剰」とか書かれて炎上したらしく、ホントに気持ち悪い人たちがいるなーとネットワーカー視点なコメント。


駆け足にもかかわらず今回予定していたトニー・マンスフィールドの特集や「イエローマジック歌謡曲」を中心としたテクノ歌謡は全く触れられなかったのは残念といえば残念。やはり4時間では難しいなあと思った。でもテクノ歌謡周辺の話題なんて、こういうイベントに来るような人にはもう今さら講釈されなくても分かっているだろうし音源も持っている人ばかりだと思うので、あえてバッサリとカットしたのは良かったと思う。それよりも「電子音楽 in JAPAN」で紹介されているような、知識としては知っているけど普段なかなか耳にすることが出来ない貴重な音源を聴くほうが有意義だしね。単なるノイズじゃねえか!っていう前衛すぎる音源でも!


今回チケットが完売ということで、好評につき年内にもう一度補習という形で今回補足しきれなかった分を再度やる予定だそうです。今回戸田さんや牧村さんのトークが少ししか聞けなかった(あと音響が悪かったのであまり聞き取れなかった!)のでまた呼んで欲しい。あとは個人的に安西史孝や神谷重徳あたりのシンセシストな人の色んな仕事が聴いてみたいなあ。